自動倉庫の制御システム部分を更新した事例
自動倉庫や搬送機器の寿命は永いが、これに比べオフコンやパソコンの寿命は短く、製造完了後に一定の期間(法的には5年と定められている)を経過するとメーカーから保守不能とされ、多くのお客様は安定稼働に不安を抱くことになる。
しかしシステム更新と言っても、旧機種のソフトウェアがそのまま動作することは稀で、ほとんどがソフトウェアの再開発となる。そのため、機器の制御をおこなっている部分の通信手順(プロトコル)が明確でないと更新は成功しない【 第1図】。当社では、お取引のある搬送機器メーカー様にプロトコル仕様を求めたり、過去の更新事例などを参考にしてプロトコルの予測をたて、実際に流れている電文を解析するなどして検証をおこなった後に更新の可否を判断している。
杉山チエン様の場合
埼玉県入間市にあるローラーチェーンメーカー、杉山チエン様からシステム更新のご相談を受けたとき、プロトコル部分について調査をおこなった。そして当社が協力している輸送機器メーカーに更新の実績があることが判り、システム更新は可能であると判断した。システムを更新するときは、ほとんどの場合、現行システムの改善が盛り込まれる。数回に渡る改善打合せ会議を経て、杉山チエン様では以下の点が問題であることが判ってきた。
1)入庫品目をキーボードから手入力しているため、入庫ミスが発生しやすい。
また、入力忘れがあるためシステムに登録されていない品目が在庫することがある(いわゆる、「お化け在庫」の発生)。
2)出庫の際、製造ラインに現品票を付けるが、これが手書きであるため効率が悪い。
1)の問題については入庫伝票のバーコードを読み込むことで解決し、
2)については出庫ステーション付近で現品票をプリントアウトすることで解決することにした。
システムの説明
対象となる倉庫は、2階層の工場で稼働しており、1階では入出庫、2階では出庫をおこなっている。棚数は1,140あり、クレーンは2基、入出庫ステーションは1階・2階とも4箇所ずつある【写真1、写真2】。日中は1階、2階とも出庫作業があり、1階の入庫作業は夕刻に集中する。システムはサーバと、各ステーション脇に置いたパソコンで構成される【 第2図】。入庫作業では、現品票のバーコードをリーダで読むが、リーダはワイアレスタイプを採用した【写真3】。これはデータ伝送を赤外線でおこなうタイプであり、原則として受光部とリーダが可視範囲内にあることが条件となるが、作業員の方はあまり意識しないで読み込みをされている。
【写真1】 |
【写真2】 |
【写真3】 |
【写真4】 |
部品の荷姿は、ドラム缶、段ボール箱など様々で、パレットに混載状態で倉庫に格納される【写真4】。
入庫のときは積載率の低いパレットが出てくるようにシステムは動作する。この積載率は入出庫のとき作業員の方が目視で判断して画面から入力している。
導入の効果と今後の課題
入庫ミスについては、ほぼ解消したと評価される。ただし画面操作ミスによって、お化け在庫の撲滅が一時は完全に達成されなかったが、画面に確認機能を付けたことでお化け在庫も解消した。また現品票をプリンタで作成することで作業がひとつ消滅した。今後の課題としては、在庫精度の向上と、在庫そのものの減少にある。ひとつのドラム缶に最大で約20万点が入るという、チエン部品の性質上、在庫精度を完璧に求めることは困難を要するが、当社のシステムを一層活用されることで杉山チエン様のご期待にますます応えたいと願っている。
【杉山チエン様のご紹介】
1946年創業。埼玉県入間市に本社と工場を持ち、総合チェーンメーカーとして動力伝達用チェーンから、 コンベアーチェーン、エンジニアリングチェーンまで製品を開発し一貫生産する。 その品質と性能は世界の一級品として知られている。
〇杉山チエンWebサイト⇒ http://www.sychain.com/japan.html